LeanPower Lab運営者の「Masa」です。世はまさにピラーレス全盛期。強化ガラス越しに煌びやかなLEDを魅せるPCが市場を席巻しています。しかし、私たちが求めているのは、そんな「映え」ではなく、質実剛健な機能美ではないでしょうか。深夜の作業を妨げない静寂、長期間の運用に耐えうるメンテナンス性、そして何より、スチールパネルを閉じた瞬間に完成する凝縮感。
「中身が見えないからこそ、内部の配線には徹底的にこだわりたい」
本記事は、そんな硬派な美学を持つあなたに向けた、裏配線がしやすい「本物のPCケース」の技術的解析レポートです。
【この記事でわかること】
- ガラスパネルでは得られない「詰めても閉まる」物理的な安心感
- 静音スチールモデル特有の配線スペース活用術と注意点
- 流行を追わない質実剛健なメーカーが作る配線しやすい名機
- 裏コネクタやファンハブを駆使した最新のケーブル隠蔽テクニック
PCケースで裏配線がしやすいモデルの構造的特徴
「裏配線がしやすい」と一口に言っても、単にスペースが広ければ良いというわけではありません。ケーブルを通す穴の位置や、束ねるためのガイド、余ったケーブルを隠す場所など、設計思想が大きく影響します。まずは、カタログスペックだけでは見落としがちな、配線作業を楽にするための構造的なポイントを解説します。
30mmの空間確保とPCケースのメンテナンス性

裏配線のしやすさを決定づける最も基本的かつ絶対的なパラメータ、それが「マザーボードトレイ裏のクリアランス深度」です。多くのPCケースのスペックシートには「Cable Routing Space: 15-25mm」といった記載がありますが、この数値のわずか数ミリの違いが、組み立て時の快適性と将来のメンテナンス性を天と地ほどに変えてしまいます。
一般的に、エントリークラスからミドルレンジの多くのケースでは、裏配線スペースは15mmから20mm程度に設定されています。一見十分なように思えるかもしれませんが、実際に組み立ててみると、この狭さは致命的なボトルネックとなります。例えば、PCの生命線である24ピンメイン電源ケーブルは、スリーブケーブルの場合、直径だけで10mmから12mmほどの太さがあります。ここに、フロントパネルのUSB 3.0フラットケーブルや、ケースファンの細いケーブルが重なった瞬間、厚みは簡単に20mmを超えてしまいます。スペースが20mm以下のケースでは、これらのケーブルが決して重ならないように、パズルのように平面に並べていく「Play tiling(平面配置)」という高度なテクニックが要求されます。少しでも重なれば、サイドパネルが中央で湾曲し、固定ネジが回らなくなるか、最悪の場合はパネルの爪が破損するリスクすらあります。
私が強く推奨するのは、「30mm以上」のクリアランスを確保したモデルです。30mmという空間は、配線における一つの「特異点(Singularity)」と言っても過言ではありません。この深さがあれば、太いメインケーブルの上に、ファンケーブルやRGBケーブルが無造作に重なったとしても、まだ数ミリの余裕が残ります。
また、ソリッドパネル(スチール製)は、ガラスパネルと比較して素材自体に多少の柔軟性(たわみ)があるため、数ミリ程度の配線の膨らみであれば吸収してくれる特性があります。しかし、それに甘えて無理やり押し込むと、長期的な圧力でマザーボードトレイが歪んだり、ケーブルのコネクタ部分に負荷がかかったりする原因になります。だからこそ、物理的な空間としての30mmが必要なのです。この余裕は、将来的にSATA SSDを増設したり、ファンコントローラーを追加したりする際にも、既存の配線をすべて解くことなく、新しいケーブルを通す隙間を提供してくれます。「大は小を兼ねる」という言葉は、PCケースの裏配線スペースのためにある言葉だと言っても過言ではないでしょう。
遮音材搭載の静音PCケースにおける配線のコツ

我々のような「鉄の蓋」派がソリッドパネルを選ぶ大きな理由の一つに、静音性の確保があります。PC内部のファンノイズやHDDのシーク音を外部に漏らさないために、サイドパネルの内側に高密度の遮音材(吸音スポンジやビットマンシート)が貼り付けられているモデルは非常に魅力的です。しかし、裏配線という観点から見ると、この遮音材は「スペースを物理的に圧迫する障害物」になり得ます。
多くの静音ケースでは、遮音材の厚みが5mmから10mmほどあります。カタログスペックで「裏配線スペース25mm」と謳っていても、そこに10mm厚の吸音スポンジが貼られていれば、実質的にケーブルを通せる空間は15mmしか残されていないことになります。この事実を見落としてケースを選ぶと、組み立ての最終段階で「パネルが閉まらない」という絶望的な状況に直面することになります。無理に閉めようとすれば、硬いケーブルが柔らかい吸音スポンジに食い込み、長期的にはスポンジがボロボロに劣化したり、あるいは反発力でサイドパネルが常に外側へ押し出される力がかかり、共振音の原因になったりすることさえあります。
遮音材の厚みを考慮したケース選び
静音ケースを選ぶ際は、単なる「配線スペースの数値」だけでなく、マザーボードトレイのデザインにも注目してください。優秀な静音ケースは、マザーボードトレイ自体をシャーシのフレームよりも一段奥に配置(オフセット)することで、吸音材の厚み分を相殺する設計になっています。
また、配線のコツとしては、吸音材が貼られているエリア(主にパネル中央部)と、貼られていないエリア(パネルの端やフレーム部分)を見極めることが重要です。最も太い24ピンケーブルなどは、可能な限り吸音材の影響を受けにくいパネルの前方(フロント寄り)や、最初から溝が掘られている部分に配置するのが鉄則です。逆に、細いファンケーブルなどは吸音材に多少押し付けても問題ないため、中央部分に分散させる戦略が有効です。静音性を追求するならば、ケーブル一本一本の配置が空気の層を潰さないよう、繊細なマネジメントが求められます。「静音」と「配線のしやすさ」はトレードオフの関係にありますが、構造を理解していれば両立は十分に可能です。
E-ATX対応PCケースの裏配線とグロメット配置

質実剛健なワークステーションやハイエンドゲーミングPCを構築する場合、マザーボードの規格としてE-ATX(Extended ATX)を選択することもあるでしょう。標準的なATXマザーボードの幅が244mmであるのに対し、E-ATXは最大で277mm〜330mmと幅広になります。ここで発生するのが、「裏配線用の穴(グロメット)がマザーボードで塞がってしまう問題」です。
多くのミドルタワーケースはATXサイズを基準に設計されており、ケーブルホールもATXマザーボードの右端に合わせて配置されています。ここに幅の広いE-ATXボードを取り付けると、本来ケーブルを通すべき穴が基板の下敷きになり、完全に隠れてしまうのです。こうなると、24ピン電源ケーブルなどを通すルートがなくなり、はるか遠くのドライブベイ用の穴から迂回させたり、マザーボードの横から無理やりケーブルを回り込ませたりする必要が出てきます。これでは「裏配線がしやすい」どころか、見た目も悪く、エアフローも阻害する最悪の結果となります。
裏配線を重視してE-ATX対応ケースを選ぶ際は、単に「E-ATX対応」というスペック表記を鵜呑みにしてはいけません。重要なのは、「E-ATX搭載時のケーブルマネジメント構造」です。優秀なケースでは、以下のいずれかの対策が施されています。
- グロメットの斜め配置: ケーブルホールがマザーボードに対して並行ではなく、斜めに配置されていることで、基板の幅が広がっても穴の一部が露出するように設計されている。
- デュアルレーン構造: ATX用の穴とは別に、さらに外側(フロント寄り)にE-ATX用の予備の穴やスリットが用意されている。
- 段差構造(ステップ・トレイ): マザーボードトレイの右端に段差を設け、基板の下からケーブルを潜り込ませるような立体的な配線ルートを確保している。
| チェック項目 | 重要性 |
|---|---|
| グロメットの位置 | 基板の幅(例:277mm)で隠れないか寸法図で確認する |
| 基板裏の干渉 | E-ATXの裏面にあるハンダの突起がケースに接触しないか |
| コネクタの向き | 横向き(90度)コネクタの場合、配線穴との距離が必要 |
特に最近のハイエンドマザーボードは、基板の裏面にバックプレートや補強用アーマーを装備していることが多く、これがケース側のケーブルガイドや段差と干渉することもあります。E-ATXで裏配線を美しく決めるには、ケースの許容幅だけでなく、こうした「数センチの攻防」を制する構造的配慮があるかどうかが鍵となります。
ファンハブ活用によるケーブル本数の削減効果

近年のPCビルドにおいて、配線の複雑さを指数関数的に増大させているのが「冷却ファン」の存在です。静音性と冷却性能を両立させるために、フロントに3基、トップに3基、リアに1基と、合計7基以上のファンを搭載することも珍しくありません。しかし、これら全てのファンから伸びる「PWM電源ケーブル」と、場合によっては「RGB制御ケーブル」を個別にマザーボードへ接続しようとすると、裏配線スペースは瞬く間にケーブルのジャングルと化します。
裏配線がしやすいケースを語る上で欠かせない要素、それが「統合ファンハブ(Fan Hub)」の有無です。これは単なる付属品ではなく、配線設計を根底から変える重要なコンポーネントです。
これにより、マザーボードの表面や裏面を横断するケーブルの総量を大幅に削減できます。特にFractal DesignやBe Quiet!といったメーカーのケースに搭載されているファンハブは、ケースのフレーム形状に沿って最適な位置(通常はトップパネル付近の裏側)に薄型設計で固定されています。この「位置」が極めて重要で、トップファンやリアファンのケーブルを最短距離で接続でき、余ったケーブル長をまとめる手間も省けます。
また、マザーボード上のファンヘッダーが少ないエントリークラスの板を使用する場合でも、ハブがあれば多数のファンを一括制御できるというメリットもあります。裏配線の見た目を美しくするだけでなく、ケーブルの束を減らすことで裏配線スペースの通気性を確保し、熱がこもるのを防ぐ効果も期待できます。「たかがハブ」と侮るなかれ。これの有無が、組み立て時間の短縮と仕上がりのクオリティに直結するのです。
電源シュラウドとHDDケージ干渉の回避策

現代のPCケースの標準装備となった「電源シュラウド(ボトムチャンバー)」。電源ユニット(PSU)や余ったケーブルを隠してくれる便利なカバーですが、ここには構造的なジレンマが潜んでいます。それは、電源ユニットとフロント側の3.5インチHDDケージとの間で発生する「領土問題」です。
高出力な電源ユニットほど奥行きが長く(160mm〜200mm)、ケーブルも太く硬くなります。一方で、多くのケースはフロント下部に3.5インチHDDケージを配置しています。この二つに挟まれた空間が狭いと、電源ユニットから出た直後の太いケーブル束を直角に曲げなければならず、物理的に収まらないという事態が発生します。特に、コネクタ付近で無理にケーブルを曲げると断線のリスクがあるだけでなく、反発力でHDDケージを圧迫し、共振ノイズの原因にもなります。
裏配線がしやすい良質なケースは、この問題を解決するために以下の機能を備えています。
- スライド式HDDケージ: レールに沿ってHDDケージを左右に動かせる機能。電源ユニットが長い場合はケージをフロント側に寄せてスペースを確保し、逆にフロントに厚みのあるラジエーターを置く場合はケージを電源側に寄せることができます。
- 着脱式HDDケージ: そもそも3.5インチHDDを使用しない場合、ケージ自体を完全に取り外せる機能。最近はM.2 SSDの大容量化が進んでおり、HDDを搭載しないユーザーも増えています。
もしあなたが3.5インチHDDを使わないのであれば、迷わずこのケージを撤去してください。そうすることで、シュラウド内は一気に広大な「ケーブルの避難所」へと変貌します。裏配線スペースに収まりきらなかった余剰ケーブルや、長すぎるSATAケーブルなどを、この空間にゆったりと収納することができます。この「逃げ場」があるかないかで、裏配線の難易度は天国と地獄ほどに変わります。ケースを選ぶ際は、単に「HDDが何台入るか」だけでなく、「使わない時にそのスペースを配線用に転用できるか」を確認することが、賢い選択のポイントです。
実機検証で選ぶ裏配線がしやすいPCケース推奨モデル
ここからは、流行りのピラーレスやガラスパネルには目もくれず、ひたすらに「組みやすさ」と「機能性」を追求した、男前なPCケースを紹介します。実際に私がビルドし、その配線のしやすさに感銘を受けたモデルだけを厳選しました。
静音重視のFractal Design Define 7
我々ソリッドパネル派にとっての「聖域(Sanctuary)」とも呼べる存在、それがFractal Designのフラッグシップモデル、Define 7 (Solid)です。市場には強化ガラスモデルも流通していますが、このケースの真価は、産業グレードの吸音材を纏ったソリッドパネルモデルにこそ宿ります。
このケースが「裏配線のベンチマーク」と称される理由は、徹底的に計算されたケーブルマネジメント設計にあります。まず、マザーボード裏の配線スペースは30mm確保されています。前述の通り、この30mmという深さは、複数のケーブルを重ねてもパネルが閉まる絶妙な数値です。さらに、主要なケーブル経路には、樹脂製のケーブルガイドと強力なベルクロストラップがあらかじめ設置されており、ユーザーは「ここにケーブルを通してくれ」という設計者の意思に従ってケーブルを這わせるだけで、プロレベルの整然とした配線が完成します。
| 機能 | 詳細解説 |
|---|---|
| デュアルレイアウト | 内部構造を「オープン」から「ストレージ」へ変更可能。最大14台のHDDを搭載しても、裏配線ルートが破綻しないよう専用のガイドが機能します。 |
| Nexus+ 2 ファンハブ | PWMファン3基、3ピンファン6基を制御可能な超薄型ハブを標準装備。マザーボードへのケーブルを1本に集約できます。 |
| 着脱式ケーブルシールド | 電源ユニットから出るケーブルの束を隠すための樹脂製カバーがあり、見た目を整えるだけでなく、エアフローの乱流を防ぎます。 |
実際に組んでみると分かりますが、サイドパネルが「ラッチ構造(押し込むだけで固定される仕組み)」であることも大きな利点です。ネジ止めのパネルだと、配線が膨らんでいる時にネジ穴を合わせるのに苦労しますが、Define 7はパネル全体で圧力を分散して保持するため、多少の反発力があっても「カチッ」という音と共に確実に閉まります。静音性を極めつつ、配線のストレスをゼロにしたいなら、これ以上の選択肢はありません。
小型でも余裕があるASUS Prime AP201
「小さいケースがいいけど、メンテナンス性は犠牲にしたくない」「ガラスで中身が見えるのは落ち着かない」という方に最適なのが、ASUSのPrime AP201です。33リットルというMicro-ATXサイズでありながら、全面に高精度のメッシュパネルを採用した、通気性とミニマルなデザインを両立させたモデルです。
このケースの裏配線における最大の衝撃は、その広さです。マザーボード裏の配線スペースは驚異の32mmを確保しています。これは、多くのフルタワーケースをも凌駕する数値であり、小型ケースの常識を完全に覆しています。通常、小型ケースの裏配線といえば、ミリ単位の隙間にケーブルを押し込む苦行が伴いますが、AP201では適当に束ねたケーブルを放り込んでも、何の問題もなくパネルが閉まります。
また、このケースは電源ユニットをフロント上部に吊り下げる独自の配置を採用しています。これにより、電源ユニットの直下(通常なら3.5インチベイがある場所)に広大な空間が生まれます。ここを「ケーブルの溜まり場」として活用することで、余った長さのケーブルを全てここに逃がすことが可能です。メッシュパネル越しにうっすらと内部のシルエットが見えますが、詳細な配線の粗までは見えないため、「なんとなく綺麗に見える」という絶妙な視覚効果も持ち合わせています。初めての小型PCビルドでも、失敗するほうが難しいレベルの親切設計です。
マザーボード裏コネクタケースという新規格の革命
いま、自作PC業界で密かに、しかし確実に進行している革命があります。それが「BTF (Back-To-the-Future)」や「Project Zero」と呼ばれる背面コネクタ(裏コネクタ)規格です。これは、「裏配線をきれいにする」のではなく、「表から配線をなくす」という究極のアプローチです。
この規格に対応したマザーボードとケースを使用すると、24ピン電源、CPU補助電源、SATA、ファンヘッダー、フロントパネルコネクタなど、あらゆるケーブルの接続口がマザーボードの裏側に配置されます。つまり、メインチャンバー(マザーボードの表面)には、ケーブルが一本も見えない状態になります。
ソリッドパネル派にこそおすすめしたい理由
これらは元々、ガラスケースで「映える」ために開発された技術ですが、実は我々のようなソリッドパネル派にこそ、実用面での巨大なメリットがあります。
- 最強のエアフロー: 表側にケーブルという障害物が一切なくなるため、フロントファンから取り込んだ冷気が、抵抗なくCPUクーラーやグラフィックボードに直撃します。これにより、ファン回転数を下げても冷却性能を維持でき、結果として静音性が向上します。
- メンテナンスの簡略化: 狭い隙間に指を突っ込んでコネクタを抜く必要がありません。裏蓋を開ければ、全てのコネクタにダイレクトにアクセスできます。配線を曲げたり隠したりする美的センスも不要。「裏で挿すだけ」です。
ドイツの重戦車 Be Quiet! Silent Base 802
Fractal Designと双璧をなす「裏配線の最高峰」として私が強く推したいのが、ドイツの静音パーツメーカーBe Quiet!のSilent Base 802 (Non-Window)です。日本では知る人ぞ知るブランドですが、その設計思想は狂気的なまでに合理的です。
このケースの裏配線における最大の特徴は、「マザーボードトレイの完全反転(Inverted Layout)」が可能である点です。
反転レイアウトとは?
マザーボードの配置を左右逆にし、ケースの右側から内部にアクセスする構造に変更できます。このギミックを実現するために、ケーブルマネジメント設計が左右対称に近い柔軟性を持っており、「どちら側を裏にしても配線がしやすい」という稀有な特性を持っています。
また、PSUシュラウド(電源隠し)の天板が複数のプラスチックカバーで分割されており、必要な箇所だけを開けてケーブルを通すことができます。これにより、GPUの電源ケーブルなどを最短距離で直上に出すことができ、裏配線スペースでのケーブルの交差を最小限に抑えられます。
| ポイント | 詳細 |
|---|---|
| 極厚の遮音マット | サイドパネルには最大10mm厚の遮音材が貼られていますが、筐体幅が281mmと巨大なため、配線スペースが圧迫されません。 |
| 巨大な空間 | フルタワーに近いサイズ感で、裏配線スペースの深さは場所によっては40mm近くあり、ケーブルを「隠す」能力は現行ケースでトップクラスです。 |
「Fractalはみんな使っているから被りたくない」という方にとって、このドイツ製の重戦車は、所有欲と配線のしやすさを同時に満たしてくれる最高の選択肢になるはずです。
サーバー用途に適したAntec P101 Silent
「AntecのPシリーズ」と聞いて懐かしさを感じるあなたは、きっと古くからの自作ユーザーでしょう。P101 Silentは、その期待を裏切らない、「質実剛健」を形にしたようなケースです。流行のピラーレスやRGBとは無縁の、完全密閉型の静音ケースです。
スペック上の裏配線スペースは約18mmと、Define 7などに比べると決して広くはありません。しかし、このケースには他にはない強力な武器があります。それは、現代のケースでは絶滅危惧種となりつつある5.25インチオープンベイを装備している点です。光学ドライブを使用する場合も便利ですが、もし使用しない場合、このベイは「巨大なケーブル収納庫」として機能します。
また、電源ユニットをケース背面からブラケットを介して挿入する方式(リアインサート方式)を採用している点も見逃せません。これにより、先に電源ユニット以外の全ての配線を済ませておき、余ったケーブル束を電源シュラウドの中に押し込んでから、最後に電源ユニット本体で「蓋をする」というパワープレイが可能になります。吸音材が分厚いため、パネルを閉める際にはケーブルを平らに均す工夫が必要ですが、3.5インチHDDを8台搭載するようなホームサーバー用途においては、この堅牢さと収納力は代えがたい魅力です。「魅せる」要素を一切排除し、機能だけに全振りした潔さが、配線作業にも独特の「逃げ道」を用意してくれています。
【補足】P101 Silentの入手性と代替モデルについて
P101 Silentは発売から年数が経過しているロングセラーモデルのため、時期によってはAmazonなどの大手ECサイトで新品在庫が見当たらない場合があります。
結論:PCケースで裏配線がしやすい究極の選択
流行りのガラスケースが悪いとは言いません。しかし、メンテナンス性、静音性、そして「配線なんて気にせず蓋を閉められる」という実用性を突き詰めると、やはりソリッドパネルやメッシュパネルのケースに行き着きます。
最終的にどのケースを選ぶべきか。もし予算と設置スペースが許すのであれば、設計の完成度が頭一つ抜けているFractal Design Define 7 (Solid)を選んでおけば間違いありません。30mmのクリアランス、洗練されたケーブルガイド、そして堅牢なラッチ式パネルは、配線作業を「苦行」から「楽しみ」に変えてくれます。
一方で、デスク上のスペースを重視し、コンパクトにまとめたいならASUS Prime AP201が最適解です。その広大な配線スペースは、あなたの多少の配線ミスも優しく包み込んでくれるでしょう。
「見えない部分にこそ、最大の配慮を」。鉄の蓋を閉じたその内側で、美しく整えられたケーブルとスムーズなエアフローが稼働している。それこそが、我々が目指すPCビルドの美学ではないでしょうか。ぜひ、あなたのスタイルに合った「配線しやすい相棒」を見つけて、ストレスフリーな自作ライフを楽しんでください。
