LeanPower Lab運営者の「Masa」です。自作PC好きにとって、Ryzenの驚異的なマルチスレッド性能は非常に魅力的ですが、24時間365日常時稼働させるホームサーバーや、静音性を重視したPCを組む際にどうしても気になってしまうのが「アイドル時の消費電力」ではないでしょうか。特に競合するIntelのCPU(Core i5-13500やCore i3-14100など)と比較すると、何もしていない時のシステム全体の消費電力が10Wから20Wほど高い傾向にあり、昨今の電気代高騰や発熱対策の面で大きな悩みの種になりがちです。私自身もRyzen 9 7900Xで仮想化サーバーを構築した際、予想以上のアイドル電力(50Wオーバー)に直面し、頭を抱えた経験があります。
しかし、そこで諦めるのはまだ早いです。BIOS設定の徹底的な見直しや、システムのボトルネックとなっているパーツ選定の工夫次第で、このギャップを「許容範囲内」まで埋めることは十分に可能です。
この記事でわかること
- Ryzenのアイドル消費電力が高くなる物理的な原因と仕組み
- BIOS設定によるSoC電圧やメモリクロックの最適化手順
- 省電力設定の肝となるASPMやCステートの有効化方法
- アイドル10W切りを目指すための具体的なパーツ構成と検証結果
Ryzenのアイドル電力を解決するための原因と設定
まずは、なぜRyzenのアイドル電力が高くなってしまうのか、その根本的な原因を理解することから始めましょう。単に「AMDは電力を食う」と決めつけるのではなく、BIOSの設定画面を開く前にこの「構造的な理由」を深く知っておくと、どの設定が効果的かが直感的に分かるようになるはずです。
消費電力が高い原因はチップレット構造

Ryzen 7000シリーズや9000シリーズの「X」付きモデル(Ryzen 9 7950X、Ryzen 9 7900X、Ryzen 7 7700Xなど)を使用していて、アイドル消費電力が高いと感じる最大の理由は、AMDがZen 2アーキテクチャ以降採用し続けている革新的な「チップレット・アーキテクチャ」そのものにあります。
従来のCPUやIntelの多くのコンシューマー向けCPU(Core i9-14900Kなどを除く下位モデルやモバイル向け)は「モノリシック」と呼ばれ、演算コア、キャッシュメモリ、メモリコントローラー、PCIeインターフェースなどのすべての機能が1つのシリコンダイ上に統合されています。この構造は、内部通信の距離が短く、電力効率が良いのが特徴です。対して、Ryzenのチップレット構造は、計算を行う「Core Complex Die(CCD)」と、メモリやPCIeなどの入出力を担当する「I/O Die(cIOD)」が物理的に別々のチップとしてパッケージ上に配置されています。
CPUコア自体がアイドル状態となり、クロックを極限まで落として深いスリープステート(C6やC10)に入ったとしても、メモリの整合性を維持し、外部I/O(USB、LAN、PCIe)からの割り込みを監視するために、cIODとInfinity Fabricのリンクは完全に停止することができません。Ryzen 7000/9000シリーズにおいて、このI/OダイはTSMC 6nmプロセスで製造されていますが、Infinity FabricのPHY(物理層)を駆動するための電力は、コアの負荷に関わらず「固定税」として発生します。複数の検証データによると、このインターコネクトとI/Oダイだけで、何も処理していなくても約10〜15Wの電力が消費されることが示唆されています。(出典:TechPowerUp『AMD Ryzen 9 7950X Review – Power Consumption』)これが、Ryzenのアイドル電力がIntelのモノリシックCPUに比べてどうしても高止まりしてしまう物理的な要因であり、設定だけでは完全に解消できない「構造上の壁」なのです。
SoC電圧のオフセット設定で下げる
構造的なハンデがあるとはいえ、BIOS設定で改善できる余地はまだ大きく残されています。その中で最もユーザーによる介入効果が高く、即効性があるのがSoC電圧(VSOC)の調整です。
System-on-Chip電圧(VSOC)は、I/Oダイ、メモリコントローラー、およびInfinity Fabricに供給される電圧です。AM5プラットフォーム(Ryzen 7000/9000)では、特にAMD EXPO(オーバークロックプロファイル)を適用したDDR5-6000などの高速メモリ設定下では、安定性を担保するためにマザーボードが自動的に1.25V〜1.35Vという極めて高い電圧をVSOCに印加する傾向があります。半導体の消費電力は電圧の二乗に比例して増加するため、この過剰な電圧はI/Oダイの発熱と無駄な電力消費の主因となります。

VSOC調整のステップ
- 基準電圧の特定: 通常、DDR5-4800〜5200(JEDEC準拠速度)であれば、VSOCは1.00V〜1.05V程度で十分に安定動作します。まずは現在の電圧を「HWInfo」などのツールで確認しましょう。
- オフセット設定の適用: BIOSの「AMD Overclocking」または電圧設定メニューから、VSOCに対してマイナスオフセット(例:-0.05V〜-0.1V)を適用するか、固定モード(Override)で1.00V〜1.05V程度の低電圧を指定してみましょう。
- 安定性テストの実施: 電圧を下げすぎるとシステムが不安定になり、突然の再起動やフリーズ(WHEAエラー)の原因になります。「OCCT」や「Y-Cruncher」、「Prime95」などの負荷テストツールを使って、少なくとも1時間程度は安定性を確認しながら少しずつ下げるようにしてください。
私の検証や多くのユーザーレポートによれば、VSOCをデフォルトの1.25V付近から1.00V付近まで下げるだけで、アイドル時のシステム消費電力が5〜10W低下したという報告が多数存在します。これは、常時通電しているI/Oダイの消費電力を直接削る最も効果的な手段です。ただし、限界まで下げるとUSB接続が不安定になったり、メモリエラーが発生したりするリスクもあるため、あくまで「安定動作するギリギリ」を見極めることが重要です。
メモリクロックと同期モードの調整
次に注目したいのがメモリ周りの設定です。パフォーマンス重視の自作PCでは「メモリクロックは高ければ高いほど良い」とされがちですが、「省電力」という観点では、電圧と同期モードの理解が不可欠になります。
まず大前提として、「AMD EXPO」などのオーバークロック機能は無効(Disabled)にしてください。DDR5-6000などのOCメモリは、安定動作のために電圧を1.25V〜1.35Vに昇圧しており、これがI/Oダイの発熱と消費電力増の大きな要因になります。
一方で、現在主流の「DDR5-5600」などの定格(JEDEC準拠)メモリであれば、電圧は1.1Vのままです。この場合、4800MHzと比較してもアイドル電力の差はごくわずかですので、無理に古い4800MHzのメモリを探す必要はありません。
ただし、究極まで電力を削りたい場合は、以下のチューニングが有効です。

チューニング案
- あえてクロックを下げる: BIOSでメモリクロックを手動で「DDR5-4800」や「DDR5-5200」に固定することで、メモリコントローラーへの負荷をわずかに減らせます。サーバー用途で帯域幅が不要な場合におすすめです。
- UCLK(コントローラークロック)の調整: 通常、Ryzenはメモリクロックとコントローラーを1:1で同期させますが、これを「1:2(UCLK=MCLK/2)」モードにすることで、コントローラーの動作周波数を半分に落とし、省電力化を図るテクニックがあります。
- Infinity Fabric (FCLK) の固定: FCLKを2000MHz以上に設定すると要求電圧が上がります。これを1600MHzや1800MHzといった保守的な値に固定することで、SoC全体の消費電力を抑制できる可能性があります。
結論として、「まずは定格(1.1V)のメモリを選び、EXPOを使わないこと」。これだけで9割の省電力効果は得られます。
ASPMとCステートの有効化手順
「設定したはずなのに思ったほど消費電力が下がらない」「ワットチェッカーの数値が動かない」という時に一番怪しいのが、ASPM(Active State Power Management)の設定漏れです。これはRyzenに限らず現代のPCにおける省電力の要です。
ASPMは、PCI Expressリンクを使っていない時に、そのリンクの電力を動的にカットする機能です。L0(通常動作)から、L0s(スタンバイ)、L1(低電力)、さらに深いL1.1、L1.2といったステートへ移行することで、リンクの物理層(PHY)への給電を遮断します。しかし、多くの自作PC向けマザーボードは、様々な拡張カードとの互換性とシステムの安定性を最優先するため、BIOSのデフォルト設定でASPMが無効化(Disabled)されているか、浅い省電力設定(L0sのみ)に留められていることが多々あります。
BIOS設定画面に入り(Advancedモード)、以下の項目を徹底的に確認・変更してください。

確認と変更
- Native ASPM: Enabled に設定。これによりOS側がASPMを制御できるようになります。
- PCIe Link State Power Management: Maximum Power Savings または L1 Enabled に設定。すべてのリンクで省電力を有効化します。
- Global C-State Control: Autoではなく、明示的に Enabled に設定。RyzenではこれがAutoだと、負荷状況によってはCステートが無効化されることがあります。
- DF Cstates: これも同様にEnabledに設定します。Data Fabric(I/O部)の省電力設定です。
設定後は、Linuxであれば「powertop」コマンド、Windowsであれば「HWMonitor」などのツールを使用して、実際にCPUコアやパッケージ全体が「C6」や「C10」といった深いスリープステートに入っている(Residency %が上昇している)かを確認することが不可欠です。OS上でアイドルに見えてもハードウェア的に寝ていない「Cステート詐欺」を防ぐには、これらの設定の積み重ねが必須となります。
IntelとRyzenの電力差を比較
ここまでBIOS設定を詰め、電圧を下げ、ASPMを有効化しても、やはりIntel機との間には「物理的に超えられない壁」が存在するのが現実です。
最新のIntel Core Ultraシリーズや第12世代(Alder Lake)以降のCoreプロセッサ、特に末尾「T」シリーズや無印モデルは、モノリシック構造と非常に洗練されたパワーマネジメントユニット(PMU)を搭載しており、システム全体のアイドル消費電力を6W〜10W程度に抑えることが比較的容易です。IntelのCPUは、アイドル時にすべてのコア、キャッシュ、リングバスのクロックを一斉に下げ、パッケージ全体で深いCステート(Package C6/C7/C8/C10)に移る挙動が非常にスムーズです。
一方、チップレット構成のRyzen(7000/9000 Xシリーズ)は、どんなにBIOS設定を頑張っても、I/Oダイの物理的なオーバーヘッド(Infinity FabricのPHY電力)があるため、システム全体でのアイドル消費電力は30W〜40W程度で下げ止まってしまうことが多いです。例えば、同じB650マザーボード、同じメモリ、同じ電源を使用したとしても、CPUを「Ryzen 9 7900X」から「Ryzen 7 8700G(モノリシック)」に変えるだけで、アイドル電力が20W以上ストンと落ちることがあります。
| 比較項目 | Intel (Core i5-13500等) | Ryzen (7900X等 チップレット) | Ryzen APU (8700G モノリシック) |
|---|---|---|---|
| ダイ構造 | モノリシック | チップレット (CCD + cIOD) | モノリシック |
| アイドル電力目安 | 6W 〜 15W | 30W 〜 50W | 8W 〜 15W |
| I/O電力の影響 | 極小 | 大 (10-15W固定消費) | 小 |
| サーバー適性 | 極めて高い | 演算性能重視なら可 | 極めて高い |
「たかが20W」と思うかもしれませんが、24時間365日稼働させるサーバーにおいては、20Wの差は年間約175kWhの電力差になります。電気代が35円/kWhだとすると、年間約6,000円以上のランニングコストの差となり、5年運用すれば3万円の差になります。また、20W分の熱を常に排熱する必要があるため、ファン回転数を下げる限界も異なってきます。「Ryzenでなんとかしたい!」という方は、次の章で紹介する「パーツ選定」のアプローチが極めて重要になります。
Ryzenのアイドル電力を解決するパーツ選定
BIOS設定での限界を感じたら、次は物理的な構成を見直す番です。実は、「Ryzenでアイドル10W以下」を達成するための切り札が存在します。それが「APU」と「電源ユニット」の選び方です。ここからは、ソフトウェア設定ではなく、ハードウェア選定による根本解決策を提案します。
モノリシックなAPUなら10W切りも可能

もしこれからRyzenで省電力サーバーを新規に組む、あるいはCPUの買い替えを検討しているのであれば、強くおすすめしたいのが「G」の接尾辞を持つAPUモデル(Ryzen 7 8700G、Ryzen 5 8600G、Ryzen 5 8500Gなど)を選ぶことです。
これらAPU(Accelerated Processing Unit)は、デスクトップ向けRyzen(7000/9000シリーズ)とは異なり、元々モバイル(ノートPC)向けに設計されたシリコン(PhoenixやHawk Point)をデスクトップ用パッケージに転用しています。つまり、チップレット構造ではなく「モノリシック構造」を採用しているのです。この違いは決定的です。
モノリシックダイでは、CPUコア、GPU、メモリコントローラー、I/O機能がすべて単一のシリコン上に統合されており、チップ間の物理的な配線駆動電力が不要です。さらに、モバイル由来の優れたパワーマネジメントユニットが全体を統合的に制御できるため、アイドル時の電力制御が極めて高効率に行われます。実際、私のリサーチや検証データでも、Ryzen 8700Gを使用したシステムでは、適切なマザーボードと電源を組み合わせれば、アイドル8W〜12Wという、Intel機に匹敵する驚異的な数値を叩き出すことが可能です。演算性能よりもランニングコストや静音性を重視し、「Ryzenで省電力」を目指すなら、チップレットのXシリーズではなく、モノリシックのGシリーズが一択と言えるでしょう。
省電力なマザーボードと電源の選び方

CPUが決まったら、次は脇を固めるマザーボードと電源です。ここにも「大は小を兼ねない」という、自作PC初心者やハイエンド志向のユーザーが陥りやすい罠があります。
まずマザーボードですが、ハイエンドなX670EやX670チップセットは避けるべきです。X670/X670Eチップセットは、拡張性を確保するために「Promontory 21」チップを2個デイジーチェーン接続(数珠繋ぎ)した構成をとっています。これにより、チップセット自体が消費する電力が倍増するだけでなく、チップ間通信のためのリンク電力も加算されます。結果として、X670EマザーボードはB650マザーボードと比較して、アイドル時に7〜15W多くの電力を消費する傾向があります。省電力を目指すなら、シングルチップ構成の「B650」、あるいはさらに機能を絞り込んだ「A620」チップセット搭載のマザーボードを選択することが必須条件となります。
特にA620やエントリークラスのB650マザーボードは、VRM(電源回路)のフェーズ数が6〜8フェーズ程度と少ないのが特徴です。「フェーズ数は多いほど良い」というのはオーバークロック時の常識ですが、低負荷時の効率においては逆効果です。多数のMOSFETをスイッチングするにはそれだけ駆動電力が必要になるため、アイドル時のような微小電流領域においては、シンプルなVRMの方が変換効率が高い傾向にあります。
次に電源ユニット(PSU)です。一般的なATX電源(特に750Wや850Wの大容量モデル)は、定格出力の50%付近で最高効率(90%以上など)を発揮するように設計されており、10Wという負荷は定格のわずか1.3%程度に過ぎません。スイッチング電源には固定損失が存在するため、極低負荷時には変換効率が劇的に低下し、場合によっては50〜60%程度まで落ち込みます。
解決策:PicoPSUまたはATX 3.1電源
究極の省電力を目指すなら、「PicoPSU」のようなDC-DCコンバータとACアダプタの組み合わせが最強です。ただし、選び方には注意が必要です。
- PicoPSUの導入(推奨スペック):Ryzenで組む場合、必ず「PicoPSU-160-XT(160W対応)」を選び、ACアダプタは「12V 10A(120W)」以上のものを組み合わせてください。Ryzenの瞬間最大電力(PPT)は88W〜100W近くに達することがあるため、80Wや90Wのキットでは高負荷時にシステムが落ちる(ブラックアウトする)リスクが高いです。
- ATX 3.1電源の選定:HDDを4台以上搭載する場合など、PicoPSUが適さない構成では、最新のATX 3.0/3.1規格に準拠した電源を選びましょう。Intelのデザインガイドラインでも「Low Load Efficiency」(10W負荷時の効率)の改善が推奨されており、これに準拠した高品質電源(Corsair RMx Shiftシリーズなど)なら、低負荷時のロスを最小限に抑えられます。(出典:Intel Corporation『ATX Version 3.0 Multi Rail Desktop Platform Power Supply Design Guide』)
SSDや周辺機器も省電力モデルへ

意外と見落としがちなのがSSDとネットワークカード(NIC)です。これらは消費電力そのものは数ワットですが、CPUの省電力機能(Cステート)を阻害する要因となり得ます。「ASPMを有効にしたのにCステートが落ちない」という場合、原因の多くはここにあります。
高性能なハイエンドNVMe SSD(特にGen4/Gen5対応でDRAMキャッシュを搭載したモデル、例えばSamsung 990 PROなど)の中には、コントローラーが常にバックグラウンド処理を行っていたり、ASPMのL1.2ステート(Deep Sleep)への移行を拒否したり、移行すると不安定になるものがあります。サーバー用途でアイドル電力を極限まで削るなら、あえてDRAMレスの省電力モデル(例:SK Hynix Gold P31やWD Blue SN580など)を選定するのが隠れたテクニックです。これらのSSDは構造がシンプルで、ホストからの省電力要求に対して素直に応答する傾向があり、システム全体の消費電力低下に貢献します。
また、2.5GbEのLANポートも注意が必要です。IntelのI225-V/I226-VやRealtekのRTL8125といったコントローラーは、ドライバレベルでの調整が必要な場合があります。特にLinux環境(ProxmoxやUnraid)では、Realtekドライバに対して明示的に省電力設定を行わないと、リンク速度を落とさず常にフルパワーで待機し続け、CPUパッケージ全体が深いCステートに入るのを阻害するケースが報告されています。不要なUSBデバイス(キーボードやマウスのドングル含む)を外すことも、検証時には重要です。
構成別の実測データと10Wの壁
では、実際にどの程度の消費電力になるのか、これまでのリサーチとユーザー検証データを基に、代表的な2つの構成パターンでシミュレーションしてみましょう。「推奨構成リスト」も用意しましたので、パーツ選定の参考にしてください。
構成パターンA:チップレット構成(Ryzen 9 7900X + B650 + ATX電源)
既存のXシリーズやハイエンドCPUの演算性能を活かしつつ、BIOS設定とパーツ選定で限界まで省電力化を図る構成です。仮想化サーバーや動画編集機など、パワーが必要な用途に向いています。
【この構成の推奨パーツ】
- CPU:AMD Ryzen 9 7900X / 9900X(12コア以上の多コアモデル)
- マザーボード:ASRock B650 Pro RS(X670Eは避け、VRM効率の良いB650を選択)
- メモリ:ADATA DDR5-5600 32GBキット (1.1V定格駆動の「Premier」シリーズ)
- SSD:KIOXIA EXCERIA PLUS G3 1TB(DRAMレス構造のため、待機電力は極小)
- 電源ユニット:CORSAIR RM750e(大容量モデルほど低負荷時の効率が悪化するため、サーバー用途では「一番下のモデル」が正解)
- デフォルト設定: アイドル時 45W 〜 55W
- BIOS最適化後(VSOC下げ、ASPM有効、メモリ定格): アイドル時 30W 〜 35W
この構成では、SoC電圧を下げたりASPMを有効化したりすることで、初期状態から約15W〜20Wもの大幅な削減が可能です。しかし、どれだけ頑張っても30Wの壁は厚く、10W切りは物理的に不可能です。これがチップレット構造の「固定税」ですが、50Wオーバーで放置するよりは遥かにマシな運用が可能になります。
構成パターンB:モノリシック構成(Ryzen 7 8700G + A620 + PicoPSU)
アイドル10W切りを本気で狙う、究極の省電力サーバー構成です。24時間稼働のホームラボや常時起動PCに最適です。
【この構成の推奨パーツ】
- CPU:AMD Ryzen 7 8700G(モノリシックAPU・最強の省電力モデル)
- マザーボード:ASRock B650M-HDV/M.2(機能を絞ったシンプルモデル)
- メモリ:ADATA DDR5-5600 32GBキット (1.1V定格駆動の「Premier」シリーズ)
- SSD:KIOXIA EXCERIA PLUS G3 1TB(DRAMレス構造のため、待機電力は極小)
- 電源キット:PicoPSU-160-XT(160W対応モデル)
- ACアダプター:SUCCUL ACアダプター 12V 10A (Amazonで最も実績のある12V電源の一つ)
- プラグ変換アダプタ:DCジャック変換アダプタ (2.1mmメス → 2.5mmオス)
PicoPSU接続時の注意点
B650MマザーボードのCPU電源端子は「8ピン」ですが、PicoPSU側のケーブルは通常「4ピン」です。Ryzen 8700G程度の消費電力であれば、マザーボードの8ピン端子の片側(形状が合う方)に4ピンケーブルを挿すだけで問題なく動作します。別途変換ケーブルを買う必要はありません。
- デフォルト設定: アイドル時 20W 〜 25W
- BIOS最適化後(VSOC下げ、ASPM有効): アイドル時 8W 〜 12W
こちらは完全に別世界です。APUのモノリシック特性とPicoPSU(160Wモデル推奨)の高効率性が相乗効果を生み、Intel NUCやモバイルノートPC並みの超省電力が実現できています。条件が揃えば一桁台(例:8W)も十分に視野に入ります。この数値なら、24時間稼働でも電気代を気にする必要はほとんどありません。
Ryzenのアイドル電力解決に向けた結論
まとめ:Ryzen アイドル電力 解決へのロードマップ
- 既存のRyzen 7000/9000ユーザー(Xシリーズ): SoC電圧のオフセット(-0.05V〜-0.1V)とASPMの完全有効化を行い、30W台前半を目指すのが現実的かつ効果的なゴールです。これ以上を望むと安定性を損なうリスクがあります。
- これから組む省電力サーバー派: 迷わず「Ryzen 8000G」シリーズ(APU)を選択し、A620またはB650マザーボードとPicoPSU-160-XT(+120Wアダプタ)を組み合わせることで、夢の「アイドル10W切り」を達成可能です。これがRyzenにおける省電力の最終回答です。
Ryzenのアイドル電力問題は、ユーザーの設定ミスではなく「アーキテクチャの特性」による部分が大きいです。しかし、その特性を正しく理解し、用途に合わせて適切なモデル(チップレットかモノリシックか)を選び、BIOS設定を詰めることで、十分に実用的な省電力運用が可能です。「Ryzenは電力を食う」という常識を、あなたの手で覆し、快適な自作ライフを送ってください。
